収支・経営

無人ジムを複数店舗で展開する方法|出店戦略と資金計画・失敗事例まとめ

無人ジムを複数店舗で展開するには、1号店の成功だけでは見えてこない出店戦略や資金計画の壁があります。

本記事では、経営者・不動産オーナーの視点から多店舗化の判断材料と失敗事例を整理し、着実に広げる方法を解説します。

無人ジムの複数店舗展開はなぜ注目されるのか

24時間ジム・セルフジムといった無人運営の施設が全国で増え、1号店の成功を足がかりに複数店舗で展開する事業者が目立つようになりました。

背景には、無人運営モデルが人件費を抑えながら収益を確保しやすい点があり、ECOFIT24が全国50店舗を達成した事例[1]は、この市場の勢いを象徴しています。

無人ジム市場の拡大と出店ラッシュの実態

無人ジム・セルフジム業界では出店ラッシュが続いており、都市部の駅前では同業の複数店舗がひしめき合う過剰競争の状況も見られます。

こうした中、ECOFIT24は2026年時点で全国50店舗を突破し[1]、今後は100店舗体制を目指すと公表しています。

フランチャイズ方式での拡大を軸に短期間での出店数拡大を実現している点が特徴で、同様のモデルを参考に新規参入を検討する事業者も増えています。

一方で競合も同じエリアに集中しやすく、立地選定の難易度は年々高まっています。

単店舗経営と多店舗展開の違い

単店舗を黒字化させることと、複数店舗を同時に黒字運営することの間には、想像以上の違いがあります。

無人ジムは初期投資や運営の仕組みが整えば出店自体のハードルは比較的低いものの、店舗数が増えるほど巡回・清掃・トラブル対応といった管理業務が複雑化します。

約20店舗を展開する経営者の知見によれば、1店舗目の成功パターンをそのまま横展開しても、店舗ごとの立地特性や会員層の違いから同じ結果が出るとは限らず、各店舗の数値を個別に管理する体制づくりが欠かせないとされています。

複数店舗展開がもたらす経営メリット

複数店舗での展開には、単店舗にはない経営上のメリットもあります。

マシンや備品をまとめて仕入れることで調達コストを抑えられるほか、同一ブランドでの出店を重ねることで地域での認知度が高まり、新規会員の獲得効率が向上しやすくなります。

さらに無人運営モデルは1店舗あたりの人件費を低く抑えられる構造のため、店舗数を増やすほど全体の収益基盤が拡大しやすいという特徴もあります。

POINT

スタッフ常駐型のジムと比較して、固定費の増加を抑えながら店舗網を広げられる点は、複数店舗展開を後押しする大きな要因といえます。

複数店舗展開を成功させる出店戦略

無人ジムを複数店舗で展開する際は、立地選定・エリアマーケティング・ブランド統一の3点が出店戦略の基本方針となります。

駅前を中心に24時間ジムの出店が相次ぎ過剰競争の様相を呈する地域もあるため、単に空き物件を埋めるのではなく、商圏の重なりや競合密度を踏まえた差別化視点を持つことが成功の分かれ目になります。

エリアドミナント戦略で商圏を固める

複数店舗展開の戦略として有効なのが、特定エリアに集中して出店するエリアドミナント戦略です。

同一商圏に複数の店舗を構えることで地域内での認知度が一気に高まり、備品配送やマシンメンテナンスといった物流効率も向上します。

さらにスタッフが巡回・清掃のために移動する距離が短縮されるため、管理コストを抑えながら店舗網を広げやすくなります。

都心部で複数店舗型の個室無人運営インドアゴルフ施設が同一エリアに連続出店している例も、こうした商圏集中の効果を裏付ける参考事例といえます。

立地選定で確認すべき3つの条件

出店候補地を評価する際は、商圏人口密度・競合店舗の密度と距離・賃料水準という3つの条件を軸に見極めることが欠かせません。

いずれか一つが優れていても他の条件が伴わなければ収支が安定しにくいため、3条件をバランスよく確認する必要があります。

それぞれの条件について、具体的な確認ポイントを順に見ていきましょう。

立地選定で確認すべき3つの条件
  1. 商圏人口密度(半径500m〜1km圏内の居住人口・就業人口)
  2. 競合店舗の密度と距離(既存24時間ジムとの距離・月会費の価格帯)
  3. 賃料水準と収支への影響(賃料が月商に占める比率)

条件1:商圏人口密度

立地評価の出発点となるのが、店舗を中心とした半径500m〜1km圏内の居住人口・就業人口です。

無人運営のセルフジムは少人数の会員でも固定費を回収しやすい収益構造を持つため、必ずしも人口密集地でなくても成立し得る点が、スタッフ常駐型の24時間ジムとの違いといえます。

条件2:競合店舗の密度と距離

駅前などの激戦区では、既存の24時間ジムとの距離や月会費の価格帯を事前に調査することが重要です。

あえて競合が集まるエリアに出店して相乗効果による集客を狙うか、距離を取って独自の商圏を確保するかは、ブランドの認知度や差別化できる設備の有無によって判断が分かれます。

条件3:賃料水準と収支への影響

賃料が月商に占める比率の目安を把握しておくことも、出店判断では欠かせません。

⚠ 注意

賃料水準が高いエリアほど想定会員数や会員単価を高めに設定する必要があり、収支計画との整合性を慎重に検証しなければ、開業後に資金繰りが厳しくなる恐れがあります。

複数店舗展開に必要な資金計画と収支シミュレーション

無人ジムを複数店舗で展開するには、1店舗あたりの初期投資とランニングコストを正確に把握した上で、複数店舗を同時展開する際の資金繰りを計画することが欠かせません。

借入と自己資金の配分、フランチャイズ加盟と自社展開のコスト差も含めて、収支シミュレーションの考え方を整理します。

1店舗あたりの初期投資とランニングコスト

無人ジムの開業には、内装工事費やトレーニングマシンの導入費に加え、入退館システムやスマートロックの導入費が必要になります。

一般的な24時間ジムの開業費用は1店舗あたり数百万円から1,000万円程度が目安とされ[2]、物件の広さや設備のグレードによって変動します。

開業後は家賃、電気代などの光熱費、入退館システムや顧客管理システムの月額利用料、清掃・巡回の外注費といったランニングコストが毎月発生するため、月商の何割を固定費が占めるかを事前に見積もっておくことが重要です。

複数店舗同時展開時の資金繰りの注意点

⚠ 注意

複数店舗を同時または短期間で出店しようとすると、開業資金と運転資金の区別が曖昧なまま進めてしまい、資金ショートに陥るケースが少なくありません。

1店舗目の売上が安定する前に2店舗目、3店舗目の工事費や設備費が重なると、手元資金が急速に減少します。

そのため、各店舗の開業資金と数ヶ月分の運転資金を別枠で確保し、金融機関には店舗ごとの事業計画書を提示して段階的な借入計画を立てることが、安定した多店舗展開につながります。

フランチャイズ加盟と自社展開のコスト比較

フランチャイズに加盟する場合は、加盟金や研修費などの初期費用に加えて月々のロイヤリティが発生する一方、本部による立地選定支援や入退館システムの導入サポートを受けられる利点があります。

全国展開する無人フィットネスジムのECOFIT24もFC加盟店を募集しており[3]、未経験から多店舗展開を目指す事業者にとって参考になる事例です。

自社ブランドで展開する場合はロイヤリティが不要な分、立地調査やシステム選定を自ら担う必要があり、ノウハウの有無によって向き不向きが分かれます。

比較項目 フランチャイズ加盟 自社展開
初期費用 加盟金・研修費などが発生 加盟金・研修費は不要
ロイヤリティ 月々発生 不要
立地・システム導入支援 本部のサポートを受けられる 自ら調査・選定する
運営の自由度 本部規定による制約がある 料金・内装などを自ら設計できる
向いている事業者 運営ノウハウが少ない事業者 多店舗経営の経験がある事業者

複数店舗を無人運営するための入退館・顧客管理システム

無人ジムを複数店舗で安定運営するためには、入退館システムと顧客管理システムの選定が成功の鍵を握ります。

店舗ごとに異なる仕組みを導入すると管理が煩雑になるため、認証方式・設置タイプ・会員管理連携の3つの軸で統一基準を定めることで、全店舗を一元的に把握できる体制を整えることが重要です。

入退館システムの認証方式と設置タイプの選び方

入退館システムには、QRコード、ICカード、スマホアプリなど複数の認証方式があり、それぞれ会員の利便性や導入コストが異なります。

また設置タイプも、工事を伴う据え置き型の入退館機と、既存ドアに後付けできるスマートロック型に分かれます。

複数店舗展開を見据える場合、物件ごとに工事の可否や制約が異なることが多いため、工事不要で短期間に導入できるスマートロック連携型の方が出店スピードを維持しやすく、結果的に有利になるケースが目立ちます。

複数店舗を一元管理する顧客管理システムの条件

顧客管理システムを選ぶ際は、月額の定期課金に対応しているか、予約枠の自動制御ができるか、そして複数店舗の会員情報や利用状況を一画面で管理できる機能があるかを確認基準とすることが欠かせません。

店舗数が1〜2店舗のうちはExcelや紙の台帳でも対応できますが、店舗数が増えるほど入会・退会処理や問い合わせ対応に時間を取られ、本部側の管理負荷が急激に高まります。

POINT

複数店舗展開を前提とするなら、開業初期の段階からクラウド型の顧客管理システムを導入し、将来の店舗増加にも耐えられる基盤を構築しておくことが安心につながります。

Akerunなどスマートロック連携の活用事例

全国展開する24時間無人フィットネスジムの一つであるECOFIT24は、Akerunのスマートロックを活用して完全無人運営の基盤を整え、フランチャイズ展開を支えるインフラとして運用している事例が知られています[4]。

スマートロックと顧客管理システムを連携させることで、本部は全店舗の入退館状況や会員の稼働状況を遠隔から把握でき、現場に常駐スタッフを置かずとも安全性を保ちながら運営を続けられます。

こうした仕組みは、複数店舗を同時に管理する際の巡回負担や人件費を抑える効果も期待できます。

よくある質問

無人ジムを複数の店舗で展開していく過程では、資金計画や運営体制について具体的な疑問が数多く浮かぶものです。

ここでは、出店を検討する経営者の方からよく寄せられる質問を取り上げ、利益が出始める時期や必要な自己資金、失敗しやすい原因、出店方式の選び方について順番にお答えします。

Q. 無人ジムを複数店舗展開するには何店舗目から利益が出ますか?
A. 結論から言えば、何店舗目から利益が出るかという店舗数の視点よりも、1店舗あたりの損益分岐点会員数を満たしているかどうかが重要です。無人ジムは家賃・光熱費・システム利用料などの固定費に対し、会員数に応じた月会費収入で採算を取る構造のため、1店舗ごとに損益分岐点を超える会員を安定確保できていれば、2店舗目以降も同じ水準で黒字化が見込めます。一般的に初期投資の回収期間は1〜2年程度が目安とされ、複数店舗展開が進むほど本部機能や仕入れにかかる固定費が分散され、全体の収益効率が高まる傾向があります。

Q. 複数店舗展開に必要な自己資金の目安はどれくらいですか?
A. 結論として、1店舗あたりの初期投資額に対して自己資金比率2〜3割程度を確保しておくことが、金融機関からの借入審査を通過しやすくする一つの目安とされています。たとえば初期投資に1,000万円前後かかる無人ジムであれば、200万〜300万円程度の自己資金を用意し、残りを融資でまかなう構成が一般的です。ただし複数店舗を同時または短期間で展開する場合は、1店舗分の自己資金だけでなく全体の資金繰りを踏まえた計画が必要になるため、日本政策金融公庫や地方銀行など融資先への事前相談を早い段階で行い、必要な自己資金総額と借入限度額のバランスを確認しておくことが重要です。

Q. 無人ジムの複数店舗展開で失敗しやすい原因は何ですか?
A. 結論として、複数店舗展開で失敗しやすい原因は、ブランド統一の不徹底、セキュリティ体制の不備、巡回・清掃体制の手薄さの3点に集約されます。店舗ごとに内装や料金体系、サービス内容がばらつくと、会員が抱くブランドイメージが店舗間で統一されず、口コミや紹介による新規集客の効果が薄れてしまいます。また無人運営は入退館システムによる認証が前提となるため、不審者対応や緊急時連絡体制などセキュリティ面の仕組みを店舗ごとに均質化できていないと、トラブル発生時に会員の安心感を損ないかねません。さらに店舗数が増えるほど巡回・清掃スタッフの手が回りにくくなり、設備トラブルや衛生面の低下が退会理由に直結する点も、既存の24時間ジムで報告されやすい失敗事例といえます。

Q. フランチャイズ加盟と自社展開はどちらが複数店舗展開に向いていますか?
A. 結論として、無人ジムや24時間ジムの運営ノウハウが少ない段階では、フランチャイズ加盟のほうが複数店舗展開への参入障壁を下げやすい選択肢です。ECOFIT24のように全国展開を進める運営会社が蓄積した出店立地の選定基準や入退館システムの導入手順、顧客管理システムの運用ノウハウを加盟時点で得られるため、自社単独で試行錯誤するよりも早い段階で店舗網を広げやすくなります。一方でフランチャイズ契約には売上に応じたロイヤリティ負担が継続的に発生するほか、料金設定や内装デザインなど運営の自由度が本部の規定によって制約される点は考慮が必要です。すでにスポーツクラブ運営などで多店舗経営の経験があり、独自のブランドで差別化を図りたい事業者であれば、ロイヤリティのかからない自社展開を選び、資金計画と出店戦略を自ら設計するほうが長期的な収益性を高めやすいといえます。

まとめ

POINT

無人ジムを複数店舗へ展開するには、エリアドミナント戦略に基づく立地選定、初期投資と運転資金を分けた資金計画、入退館システムによる一元管理という3つの視点が欠かせません。

単店舗の成功をそのまま横展開するのではなく、出店ごとの収支シミュレーションとセキュリティ体制の整備を重ねることが、無理のない店舗網の拡大につながります。

フランチャイズ加盟か自社展開かを含め、自社の経験値と資金力に合った選択を検討してみてください。