設備・システム

ジムへのIoT導入で無人化は実現するか|費用相場と成功事例3選を解説

人手不足やコスト増に悩み、ジムの運営へIoT導入を検討する経営者が増えています。

無人化は本当に実現できるのか、費用相場や成功事例を交え、経営判断に役立つ情報をお伝えします。

ジムのIoT導入とは?無人化との関係を整理

ジムをIoTで運営するとは、機器やシステムを通信でつなぎ、入退室管理や利用状況を自動で把握する仕組みを指します。

無人ジムの実現には不可欠な要素であり、DX(デジタルトランスフォーメーション)という経営改革の一部として位置づけられます。

以下で両者の違いと具体的な機器、無人化の実現度を整理します。

IoTとDXの違いを簡潔に解説

IoT(モノのインターネット)とは、センサーや機器をネットワークにつなぎデータを収集・操作する技術です。

一方DXは、そうした技術を活用して業務プロセスや経営モデル自体を変革する取り組みを指します。

ジム経営では、IoT機器の導入が入口であり、それによって無人運営や会員サービスの改革を実現することがDXの本質といえます。

無人ジムで活用される主なIoT機器

無人ジムの現場では、会員証やスマートフォンで施錠・解錠を行うスマートロック、顔認証や暗証番号による入退室管理システム、遠隔から店内の様子を確認できる防犯カメラ連携システムなどが導入されています。

加えて、マシンの利用状況を検知するセンサーを組み合わせることで、稼働率の把握やトラブル時の早期対応にもつながります。

これらを組み合わせることで、スタッフが常駐しなくても一定水準の運営品質を保てる体制が整います。

無人ジムで活用される主なIoT機器
  • スマートロック:会員証やスマートフォンで施錠・解錠を行う
  • 入退室管理システム:顔認証や暗証番号による本人確認
  • 防犯カメラ連携システム:遠隔から店内の様子を確認できる
  • マシンの利用状況センサー:稼働率の把握やトラブル時の早期対応に活用

IoT導入で無人化はどこまで可能か

IoT機器を導入しても、100%の無人化を保証するものではありません。

実際には、日中は有人スタッフが対応し、深夜・早朝のみ無人で稼働する併用型を採用するスポーツジムが多く見られます[1]。

防犯やケガ対応などのリスクを踏まえ、緊急通報システムや遠隔監視スタッフの体制を整えたうえで、段階的に無人時間帯を広げていくのが現実的な選択肢です。

フィットネス業界全体でもIoT活用による省人化が進んでいますが、安全確保の仕組みとセットで導入を検討する姿勢が求められます。

POINT

IoT導入は「完全無人化」の保証ではなく、安全確保の仕組みとセットで段階的に無人時間帯を広げる進め方が現実的です。

  • 日中は有人、深夜・早朝は無人という併用型が多い
  • 緊急通報システムや遠隔監視体制の整備が前提
  • 省人化と安全確保はセットで検討する

ジムIoT導入の主なメリットとデメリット

ジムへのIoT導入には、人件費削減やデータ活用によるサービス向上といったメリットがある一方、初期投資やセキュリティ対応などのデメリットも存在します。

経営判断を誤らないためには、フィットネス業界における具体的な数字と事例を踏まえたうえで、双方の側面を整理して理解しておくことが重要です。

人件費削減と24時間営業の実現

無人ジムの最大のメリットは、有人スタッフを大幅に削減しながら24時間営業を実現できる点です。

スポーツジムの経営において人件費は固定費の大きな割合を占めますが、IoT機器による入退室管理や利用状況の自動記録を組み合わせることで、少人数体制でも運営が可能になります。

実際にソニーグループの「Advagym」を導入した店舗では、コロナ禍で来店者数が落ち込んでいた状況から売上が5〜6倍に向上した事例が報告されています[3]。

24時間対応によって会員のライフスタイルに合わせた利用機会を提供できることも、収益改善につながる要因といえます。

会員データ可視化によるサービス向上

IoT機器を通じて得られる会員データの可視化も、大きなメリットの一つです。

トレーニング内容やマシンの利用履歴をデータとして蓄積し、会員自身が自宅からでも確認できる仕組みを整えることで、モチベーションの維持や退会防止につながります。

稼働分析ツール「トレミル」のように、経営者側がマシンごとの利用状況を可視化できるサービスも登場しており、AIマシン活用の一環として新規顧客へのプロモーションに役立てる動きも見られます[3]。

データに基づいたサービス改善は、フィットネス業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としても位置づけられています。

初期投資・セキュリティ面の注意点

一方でデメリットとして無視できないのが、初期導入コストの負担です。

スマートロックや入退室管理システム、マシンのIoT化には数百万円規模の投資が必要になるケースが多く、資金計画を慎重に立てる必要があります。

加えて、通信障害が発生した際に入退室や決済が一時的に機能しなくなるリスクや、無人時間帯における防犯・トラブル対応の課題も残ります。

⚠ 注意

緊急時に管理者へ知らせる通報システムの整備や、遠隔監視体制との併用など、導入時にはリスクへの対応策をあらかじめ検討しておく姿勢が求められます。

ジムIoT導入のメリット・デメリット整理
  • メリット①:有人スタッフを削減しながら24時間営業を実現できる
  • メリット②:会員データの可視化でモチベーション維持・退会防止につながる
  • デメリット①:数百万円規模の初期導入コストが発生しやすい
  • デメリット②:通信障害時に入退室や決済が機能しなくなるリスクがある
  • デメリット③:無人時間帯の防犯・トラブル対応の課題が残る

ジムIoT導入の費用相場と内訳

ジムへのIoT導入にかかる費用は、規模や機能範囲によって大きく変動します。

無人ジムの開業を検討する場合、初期費用は数百万円規模になることが一般的で、月額のランニングコストも見落とせません。

ここでは規模別・機能別の内訳と、費用を抑える工夫を解説します。

初期費用の相場(小規模〜中規模)

小規模なフィットネス施設であれば、スマートロックや入退室管理システムの導入だけで数十万円〜100万円程度が目安となります。

中規模以上でマシンのIoT化まで含める場合は、300万〜700万円程度の投資が必要になるケースが多く見られます[4]。

防犯カメラ連携や決済システムの統合など、機能を追加するほど費用も上乗せされる点に注意が必要です。

区分 小規模(入退室管理中心) 中規模以上(マシンIoT化を含む)
初期費用の目安 数十万円〜100万円程度 300万〜700万円程度
主な導入範囲 スマートロック・入退室管理システム 上記+マシンのIoT化
追加費用の要因 防犯カメラ連携・決済システム統合 防犯カメラ連携・決済システム統合

月額ランニングコストの目安

導入後は、システム利用料や通信費、保守費用として月額数万円〜十数万円程度のランニングコストが発生します。

会員管理システムのクラウド利用料や、入退室ログの保存にかかるサーバー費用も含まれるため、契約プランごとに内訳を確認しておくことが重要です。

無人時間帯の緊急対応を外部委託する場合は、別途費用が加算されることもあります。

月額ランニングコストに含まれる主な費目
  • システム利用料
  • 通信費
  • 保守費用
  • 会員管理システムのクラウド利用料
  • 入退室ログ保存にかかるサーバー費用
  • 無人時間帯の緊急対応を外部委託する場合の別途費用

費用を抑えるためのポイント

初期費用を抑える方法としては、既存マシンへの後付けIoT化や、機器をレンタルするプランの活用が挙げられます。

ソニーグループのAdvagymのように、月額課金型でシステムを導入できるサービスもあり、初期投資を分散させたい事業者に向いています[5]。

段階的にIoT電動トレーニングマシンを増やしていくなど、投資リスクを分散させる工夫も有効です。

POINT

初期投資の負担は、導入方法の工夫によって分散できます。

  • 既存マシンへの後付けIoT化を活用する
  • 機器レンタルや月額課金型サービスを検討する
  • IoTマシンは段階的に増やして投資リスクを分散する

ジムIoT導入の成功事例3選

ここでは、実際にジムへiotを導入し成果を上げている事例を3つ紹介します。

スポーツジムやフィットネス施設におけるSportsTechの活用は年々広がっており、無人運営・省人化・データ活用という異なる切り口の成功パターンを知ることで、自社に合う導入イメージを具体化できます。

事例1:ソニー「Advagym」による無人運営

ソニーグループが提供するAdvagymは、入退室管理から会員データの可視化までを一括で担うシステムです。

導入事例として知られるHGプランニングでは、コロナ禍で来館数が落ち込むという悩みを抱えていましたが、Advagymによる無人運営体制への転換後、売上が5〜6倍に向上したと報告されています[6]。

人件費を抑えながら24時間対応を実現した代表的な事例です。

事例2:IoT電動マシン「Higatrec」の活用

b-monster羽田スタジオでは、世界初とされるIoT電動トレーニングマシン「Higatrec」が稼働しています[7]。

マシン自体が利用者の動作データを取得し、負荷を自動調整する仕組みを備えており、スタッフが常駐しなくてもトレーニングの質を保てる点が特徴です。

AIマシン活用の一例として、業界内でも注目されています。

事例3:稼働分析ツール「トレミル」導入

「トレミル」は、ジム内のマシン利用状況を見える化する稼働分析ツールです。

経営者は各マシンの稼働率をデータとして把握でき、混雑時間帯の把握や設備投資の判断に役立てられます。

稼働実績を新規顧客向けのプロモーションに活用する事業者もあり、モチベーション向上や退会防止につながる可視化の効果が期待されています。

事例 Advagym(ソニーグループ) Higatrec トレミル
切り口 無人運営 省人化・トレーニング品質 データ活用
主な機能 入退室管理・会員データ可視化 動作データ取得・負荷の自動調整 マシン利用状況の見える化
導入先の例 HGプランニング b-monster羽田スタジオ 稼働率を把握したい事業者
期待できる効果 人件費を抑えた24時間対応 常駐なしでのトレーニング品質維持 混雑時間帯の把握・設備投資の判断

よくある質問

ここでは、ジムへのIoT導入を検討する際に多く寄せられる疑問を、Q&A形式で取り上げます。

導入期間や完全無人化の実現性、遊休不動産の活用メリット、代表的なサービスの特徴について、経営判断に役立つ形で整理しました。

Q. ジムのIoT導入にかかる期間はどれくらいですか?
A. ジムへのIoT導入にかかる期間は、機器選定から実際の稼働開始まで、規模や導入範囲によって幅があります。スマートロックや入退室管理システムのみを既存店舗に後付けする場合は、数週間程度で対応が完了するケースが一般的です。一方、Advagymのようなシステムを新規開業の店舗全体に組み込み、防犯カメラ連携やマシンのIoT化まで含めて構築する場合は、設計から工事、テスト運用まで含めて数ヶ月単位の準備期間を見込む必要があります。既存スポーツジムを段階的に無人化へ移行する場合も、会員への告知や運用体制の調整が加わるため、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
Q. 無人ジムの完全無人化は本当に可能ですか?
A. スマートロックや入退室管理システムを活用すれば、スタッフを配置せずに24時間営業を運営することは技術的に可能です。しかし、体調不良やマシンの不具合といった緊急時に人が即座に対応できない点は、完全無人化における大きな課題として残ります。そのため実際の運営では、遠隔カメラによる有人監視や緊急通報ボタン、警備会社との連携体制を組み合わせるケースが多く見られます。「100%無人でリスクゼロ」と捉えるのではなく、IoTと最低限の有人対応を組み合わせた運営形態を検討することが、現実的な選択といえるでしょう。
Q. 遊休不動産をIoTジムに活用するメリットは?
A. 空きテナントや遊休不動産をお持ちのオーナーにとって、無人ジム向けIoT設備を導入したうえでの賃貸・運営委託は、収益化の選択肢の一つとして注目されています。スタッフを常駐させる必要がないため人件費が発生しにくく、狭小な区画や駅前の小規模テナントでも運営が成立しやすい点が特徴です。運営面では、自社でフィットネス事業を立ち上げる方法に加えて、IoTジム運営会社へ物件を賃貸し、内装工事や機器導入を運営事業者側に委ねる方法もあります。ただし収益は立地や競合状況に左右されるため、事前に周辺のスポーツジム需要や賃料相場を調査したうえで、複数の運営委託先を比較検討することをおすすめします。
Q. HiTREXやAdvagymはどんな企業に向いていますか?
A. HiTREX(ハイトレック)とAdvagymは、SportsTechと呼ばれる分野の代表的なIoTサービスですが、想定される事業者タイプには違いがあります。HiTREXは高齢者施設や介護施設でのリハビリ・運動機能維持を目的とした活用事例が多く、スペースワンダーリハビリなどの機能訓練型施設との親和性が高いサービスです。一方、Advagymはソニーグループが手がけるサービスで、24時間営業のスポーツジムや無人フィットネス施設の運営効率化に強みがあります[8]。自社の利用者層が高齢者のリハビリ需要か、一般会員向けのトレーニング需要かを整理したうえで、どちらの方向性に近いかを見極めることをおすすめします。

まとめ

ジムへのIoT導入は、無人化を軸に人件費削減と24時間営業の実現を後押しする一方、初期費用やセキュリティ対応といった悩みも伴います。

Advagym・HiTREX・トレミルなど事例を踏まえ、自社の規模や利用者層に合ったサービスを比較検討し、まずは小規模導入や見積もり相談から一歩を進めることをおすすめします。

IoT導入を検討する前の確認事項
  • 無人化したい時間帯と、有人対応を残す範囲を整理したか
  • 初期費用と月額ランニングコストの資金計画を立てたか
  • 緊急通報システムや遠隔監視など安全確保の仕組みを検討したか
  • 通信障害時の入退室・決済への影響と対応策を確認したか
  • 自社の利用者層に合うサービス(Advagym・HiTREX・トレミル等)を比較したか
  • 小規模導入や見積もり相談から段階的に進める計画になっているか